1.まず始めに「民泊の種類」を知ろう!
1-1.「旅館業としての民泊(旅館業民泊)」
旅館業法の元に運営される民泊で、通常、宿泊者が日帰りでなく泊まりとなる施設を指します。
ビジネスホテルや旅館と同様に、旅館業の許可を取得する必要があります。この許可を取得するためには、消防法上の安全対策を施した施設であること、バリアフリー設備が整っていること等が求められます。
全年無休で運営可能ですが、運営にはある程度の規模が求められます。
自治体によっては、旅館業許可を取得しやすくするための支援策を設けているところもあります。
1-2.「国家戦略特区内での民泊(特区民泊)」
国家戦略特区内であれば、旅館業法に基づく許可を受けずに民泊を営むことができます。
特区民泊が可能な地域は限定されていますが、一部の地域ではこれにより観光資源の活用や地域振興が図られています。
ただし、営業日数に制限があり、一般的に年間180日までとなっています。
1-3.「民泊新法での民泊(新法民泊)」
2018年に施行された「住宅宿泊事業法」に基づく民泊です。
全国で民泊が可能になり、通常の住宅でも最大180日間、民泊事業ができるようになりました。
新法民泊の導入により、観光シーズンなど宿泊施設が足りない地域での供給力増強や、空き家問題の解消につながるなどの効果が期待されています。
一方で、自治体ごとに条例が制定されており、運営にはそれぞれの条例に従う必要があります。例えば、東京都では、新法民泊を始めるにあたり、周辺住民への事前の通知が義務付けられていますので、注意しましょう。
2.「実際に物件をチェック」しよう
2-1.用途地域について考えよう
建物の所在地がどのような用途地域に位置するかは、民泊事業が許可されるかどうかに大きく影響します。例えば、日本では都市計画法に基づき、地域は住居専用地域、商業地域、工業地域などと分けられています。
新法民泊では、商業地域や準工業地域、工業地域、第一種低層住居専用地域などであれば原則として民泊事業が可能ですが、第二種住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、近隣商業地域では都道府県知事の許可が必要となります。
旅館業としての民泊では、商業地域や準工業地域、工業地域では原則として営業が可能です。特に商業地域では、ホテルや旅館といった宿泊施設の運営が想定されているため、規制が少ないです。
一方、住居専用地域や近隣商業地域での営業は、各地方公共団体の条例によります。
これらの地域は、基本的に住民の生活を保護するための地域なので、民泊事業を始めるためには地方公共団体の許可が必要となることが多いです。特に、住居専用地域では、地元住民の生活環境への影響を最小限に抑えるため、事業者に対してさまざまな制限が設けられていることが一般的です。
*『用途地域』って何?
用地地域とは、日本の都市計画法に基づいて定められた区域のことを指します。
この区域は、土地の利用目的や建築物の建築条件などを規定しており、土地の利用者がどのような建物を建て、どのような事業を営むことができるのかを制限しています。
具体的には、以下のような用途地域が設けられています:
商業系地域:商業施設やオフィス、宿泊施設などの建設が許可されています。一部の住宅も許可されています。
住居系地域:主に住宅の建設が許可されています。ただし、一部の事業所や店舗の設置も許可されています。
工業地域:工場などの製造業の施設の建設が許可されています。しかし、住宅の建設は基本的に禁止されています。
準工業地域:住宅と工場の混在を許可しています。住居と工場が共存することを想定している地域です。
低層住居専用地域、中高層住居専用地域など:主に住宅の建設を目的とし、建築物の高さや建築形態に制限があります。
これらの用途地域は、地方公共団体による都市計画に基づいて設定され、それぞれの地域の特性や都市計画の方針に合わせて、土地利用の適正化を図っています。
したがって、土地や建物を購入し、事業を開始する際には、その土地がどの用途地域に指定されているのかを確認し、適切な利用を心掛ける必要があります。
2-2.マンション民泊の落とし穴『管理規約』を知っておこう
管理規約とは、マンション等の共同住宅において、住民の共生ルールを定めたものです。騒音、ゴミの出し方などの生活ルールから、ペットの飼育、リフォームの範囲など、様々な項目が含まれています。
民泊運営に関連する部分としては、「宿泊施設の提供」が禁止されている場合、マンション内での民泊運営はできません。また、「部屋の頻繁な出入り」や「外部の人間を部屋に入れる」等が禁止されている場合も、民泊運営は難しいといえます。
2-3.1棟で民泊始めるなら、重要『容積率』
容積率とは、土地に対する建築物の容積の割合のことを指します。この値が大きいほど、高層の建築物を建てることができます。例えば、容積率200%の土地には、敷地面積の2倍の建築物(たとえば、敷地面積100㎡なら建築物の延床面積200㎡)を建てることができます。
しかし、容積率を超えて建築物を建ててしまうと、違法建築となり取り壊し命令が出る可能性があります。一棟貸しの民泊を始める際は、この容積率をきちんと確認し、建築基準法を遵守する必要があります。
2016年6月に日本の国土交通省は、都市計画法に基づくホテルの容積率緩和策を打ち出しました。これにより、ホテルなどの宿泊施設に対する建築制限が一部緩和され、既存の用途地域であっても一定の条件下ではより大きな建物を建てられるようになりました。
具体的には、商業地域や準工業地域で、宿泊施設の用途に供する建築物の容積率を500%まで、そして地域によっては400%まで引き上げることが可能となりました。これは、それまでの容積率200%(一部地域では300%)から大幅に引き上げられたものです。
ただし、これには一定の条件があり、例えば商業地域で500%の容積率を適用するには、敷地面積が一定以上(2000㎡以上)であること、歩道等に面した敷地の一部を道路等に提供することなどの要件が設けられています。
民泊運営においては、特に一棟貸しの形式での運営を考える場合にこの規制緩和が影響します。
なぜなら、ホテルなどの宿泊施設と同じく、民泊施設もこの容積率の緩和を受けることができ、より大きな建物を建てて運営することが可能になったからです。
しかし、容積率の上限は敷地の所在地により変わりますので、具体的な計画を進める際にはそれぞれの地域の条例や計画を詳しく調査する必要があります。
また、建築許可を取得するためには、消防法や建築基準法などの要件を満たすことが求められるので、事前に十分な調査と対策が必要です。
3.営業日数と宿泊日数の違いについて
3-1.「旅館業民泊(簡易宿所)」の場合
旅館業としての民泊は、許可を得たら一年中無制限で営業が可能です。
これは簡易宿所営業ともいい、従来からある宿泊施設と同じ扱いなので、消防法等の法令に準拠した設備が必要になります。
このタイプは、民泊初心者にはハードルも高く、プロの運営者が選ぶことが多いです。
3-2.「国家戦略特区内での民泊(特区民泊)」の場合
特区民泊は、国家戦略特区内限定で、旅館業法に基づく許可を受けずに民泊ができます。
通常、営業日数に制限があり、年間180日までとなっています。
ただし、地方自治体の条例によっては、より厳しく制限される場合もあります。
具体例として、大阪市では特区民泊の場合でも最大90日まで、また、神戸市では特例民泊の場合、一部地区では年間60日までといった具体的な制限が設けられています。
3-3.「民泊新法での民泊(新法民泊)の場合
新法民泊では、住宅宿泊事業法に基づいて年間180日まで営業が可能となります。
ただし、この場合でも、地方自治体が独自に営業日数を制限することが可能です。
例えば、東京23区内では年間180日の上限がありますが、その他の地域では自治体の判断により、180日を超えて営業することが認められている場合もあります。
以上のように、具体的な営業日数や宿泊日数は、旅館業法や住宅宿泊事業法だけでなく、地方自治体の条例による制約も受けます。
したがって、民泊事業を開始する前には、自分が運営する予定の地域の条例を確認することが重要です。
また、これらの条例は変更される可能性もあるため、定期的に最新の情報をチェックするようにしましょう。
4.『戸建て民泊』『1棟民泊』『マンション一室民泊』の特徴とメリット・デメリット
4-1.『戸建て民泊』の特徴とメリット・デメリット
戸建て民泊は、自分の所有する一軒家、賃貸で戸建てを借りて、民泊として提供する形態です。
メリットとしては、一軒家全体を使って運営できるので、宿泊できる人数が多くなることがあります。
マンションにおける管理規約等の制約を気にする必要がなく、ルールなどを自身で決められる等、自由度が高くなります。
デメリットとしては、賃貸で民泊用として物件を提供することに抵抗感のあるオーナーも多く、初期投資として物件の購入費用が必要となるケースもあります。
ただし、購入した物件自体が資産となるため、リスクヘッジの一環とも言えます。
その他、宿泊者の管理責任が全てオーナーにあるため、ゴミ出しや騒音、近隣住民からの苦情など、トラブル時の対応が、必要となります点などが挙げられます。
4-2.『簡易宿所民泊』の特徴とメリット・デメリット
1棟民泊(簡易宿所民泊)は、ビルやアパートなどの一棟丸ごとを民泊として運営する形態です。
メリットとしては、大規模に運営できるため、ビジネススケールが大きく、収益性も高いです。
一棟を丸ごと運営するため、複数の部屋を一度に提供でき、大人数の宿泊者を受け入れることが可能です。
デメリットとしては、初期投資が大きい。賃貸にしても、購入して運営するにしても、初期コストが戸建てやマンション一室よりも高額になります。
また、簡易宿所としての許可を取得するためには、消防法等、様々な法令に適合した設備を整備する必要があります。
4-3.『マンション一室民泊(ワンルームクラスの場合)』の特徴とメリット・デメリット
マンション一室民泊は、マンションの一室を民泊として提供する形態です。
メリットとしては、初期投資が比較的抑えられます。一室分の購入費用、または、賃料のみで始められます。
一室だけの管理なので、物件のメンテナンスや清掃が比較的容易です。
デメリットとしては、マンションの管理規約や自治体の条例により、民泊運営が制限される可能性があります。
5.まとめ
民泊運営には法律や地域、物件の特性等を考慮する必要があります。失敗しないためには、事前にしっかりとリサーチを行い、適切な戦略を立てることが重要です。また、日々の運営やメンテナンスにも手間と時間がかかるため、それらを考慮した上での投資となるように心がけましょう。